こんにちは

今日は、
Brassica juncea による Se 取り込みの機構を研究した例
についてご紹介します。
 無機 Se が植物によって様々な有機化合物に代謝されることから、
植物の根によって浸出された Se 含有化合物の分子構造を特定することは
植物による Se 代謝のさらなる実態を明らかにすると考えられます。

そこで、2 ヶ月間栄養溶液で水耕法によって育てた Brassica juncea を、
亜セレン酸を含む栄養溶液中に移し、
根から出される化合物によって
亜セレン酸がどのように変化するかを研究しました。

20 ppm の亜セレン酸を含んだ水耕溶液を 14 日後に分析したところ、
2 種類の新たな物質が生成されていました。

論文5 Fig1



24 分のピークは、様々なSe 化合物の保持時間を
測定した結果SeMet であると予想し、
これをスパイクして確かめたところ
SeMet-P (P:ペプチドあるいはたんぱく質)という
新たな物質のピークが現れました。

栄養欠乏溶液でも栄養溶液でも  SeMet-P が生成されたことから、
SeMet は栄養溶液内の物質ではなく、
根の浸出液と反応してたんぱく質に取り込まれたと言えます。

また分析の結果、未知物質 #1 が SSeO32- であることがわかりました。

最終的には 24 分に溶出した物質は微生物変化によって生成した
DMSe であるとわかりました。


同様に 1 ppm の亜セレン酸イオンを含んだ
水耕溶液を 100 倍濃縮して分析したところ、
セレノシスチン(以後(SeCys)2)の
新たなピークが現れました。
論文5 Fig2


これをスパイクしたところ
(SeCys)2-P という新たな物質のピークが現れました。

これらのことから西洋カラシナは
根から SeO32- を吸収し、SSeO32- 及び (SeCys)2 を放出したこと、
スパイクした SeMet 及び (SeCys)2 を根の浸出液によって
それぞれ SeMet-P 、(SeCys)2-P として
たんぱく質に取り込んだことがわかりました。

つまり、西洋カラシナは SeO32- を吸収して無毒化、
あるいは取り込みやすい形態に変化していると
考えられます。

現在では根がたんぱく質を放出して
汚染金属をキレート化し無毒化する機構と、
根中でたんぱく質が汚染金属を捕捉し無毒化した後、
体外に放出する機構が考えられています。

<参考文献>
Anne P. Vonderheide, Sandra Mounicou, Juris Meija, Heather F. Henry, Joseph A. Caruso, and Jodi R. Shann Analyst, 131,33-40(2005)