こんにちは

今日はATP Sulfurylase の過剰発現による Se 吸収増大を研究した例
についてご紹介します。

ATP Sulfurylase は、 ATP のアデニリル基を無機硫酸へ転移し、
APS を合成する反応を触媒する酵素です。

この酵素は生物界に広く分布しており、
Cys や、メチオニン(Met)の生合成の鍵となるものです。

前回紹介したように、この反応を促進させることによって

硫黄(S) 
吸収と共にセレン(Se)吸収も増加します。

下図は、ATP Sulfurylase をコードした遺伝子を
Brassica juncea
に過剰発現させた時の
地上部及び根における
ATP Sulfurylase の活性を示しています。

論文2 Fig1

Wild-TypeWT)は遺伝子操作していないもの、
そして
APS1, APS8 及び APS9
それぞれの遺伝子を過剰発現させたものを表し、

Seedlings は生育 9 日目、Mature Plants は生育 6 週目のものを
それぞれ表しています。

ATP Sulfurylase を過剰発現した Brassica juncea Seedling は、
 WT と比較して地上部で1.7 ~ 2.7倍、
そして根中では
2.1 ~ 2.4倍の活性となりました。

Mature Plants の活性も地上部においては
WT 1.5 倍となりました。

この結果から、遺伝子導入の
Brassica juncea は、
Mature Plants の根を除き、
主に地上部において
ATP Sulfurylase 活性が増加したことがわかります。

下図は、 20 μM, 50 μM の硫酸イオンを
8 日間添加して生育した Brassica juncea
WT , APS8 における Se 及び S の地上部濃度を示しています。

論文2 Fig2


20 μM の硫酸イオンを与えたものは 6 週目のもので、
50 μM の硫酸イオンを与えたものは 4 週目のものです。

この結果から、どの場合も遺伝子導入した
Brassica juncea の方が
高い
S 及び Se 濃度であることが分かります。

また、亜硫酸イオンを添加した時には
WT APS8 との間に大きな違いが見られなかったことから
ATP Sulfurylase は主に硫酸イオンの吸収を促進し、
亜硫酸イオンの吸収には影響を与えない
ということがわかりました。

つまり
Seについて言えば、ATP Sulfurylase の過剰発現は
セレン酸の吸収のみを増大するということが分かりました。

硫酸還元における ATP Sulfurylase 過剰発現の影響を調査するために、
Se 処理を行なっていない WT(白), APS8(斜線)及び APS9(黒)における
S 還元物質であるチオール, グルタチオン(GSH)の濃度を測定しました

その結果を下図に示します。

論文2 Fig3

APS WT と比較して、GSH 濃度は地上部では約 2 倍、
根ではそれぞれ
1.6, 2.2 倍となりました。

また、
APS8 のチオール濃度は WT と比較して地上部では75%、
根では
35 %高くなりました。

そして、
APS9 のチオール濃度は
WT
と比較して地上部では 41%、根では 22%高い結果となりました。

<参考文献>

1)Elizabeth A.H., Pilon-Smits, Seongbin Hwang, C. Mel Lytle, Yongliang Zhu, Jenny C. Tai, Rogelio C. Bravo, Yichang Chem, Tom Leustek, and Norman Terry, Plant Physiology, 119, 123-132(1999)